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Image in the Light
2017年2月10日(金) - 24日(金) Feb.10 - Feb.24
Lower Akihabara.
http://lowerakihabara.com/exhibition_KeisukeKatsuki_2017.html

Image in the light

 

 光はいつでも私たちの周りを照らしている、あるいは私たち自身をも。私たちが何かものを見る際には常に光の反射というプロセスを経ている。そうでなければ光源を直接見ることになるが、そこに何かの像をみることができるのであればそれは幻視と呼ぶにふさわしいものだろう。ゲーテやターナーは光のなかに一体何を見たのだろうか、そして私たちは光のなかに何を見るのだろうか。

 写真において、私たちが無意識のうちに受けている光という現象はまさしく世界を描き出す装置として機能している。それはカメラ・オブスクラによって空間を(あるいは世界を)把握しようとした歴史からなり、19世紀初頭の写真の登場から現代に至るまでその視覚的経験の根本は変わっていない。しかし絵画史は写真の登場によって大きな変化を迎える。印象主義の画家たちが光を自らの目で捉えるためにアトリエの外にカンバスを持ち出して絵を描いたことからわかるように、カメラ・オブスクラの描き出す空間を前提とした視覚的経験とは異なる経験を光に求めたのである。

 現代におけるスマートフォンをはじめとした携帯デバイスには必ずと言ってよいほどにカメラが備わっており、私たちは日常的にそれを使って画像を生産し続けているのである。そして19世紀初頭と異なるのは画像を表示する媒体が、紙やガラスから液晶モニタをはじめとするディスプレイに変化していることである。それは通常、反射光によって得られていた像ではなく、自らも発光しながら像を形成するといった特殊な媒体によって支えられている。ディスプレイは私たちの視覚に即した幻視を常に表示しているわけである。絵画史の中で対象を表象する幻視は様々な形式へと変化したが、ディスプレイの幻視もまた絵画と同様に変化していくことになるだろう。

 

 本展示では幻視(Ilusion)を作り出す装置としての絵画とディスプレイそれぞれの構造を分解し、像を描き出すディスプレイを模した絵画「Pixel Painting」とともに、色面のみを表示する光としてのディスプレイ「Blank」、「Goethe’s theory」(光の抽出、像の不在)とメディウムとしての絵画「Gray(Medium)」(物質の抽出、色彩と像の不在)を展示する。

香月恵介

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